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PLOS ONE に当社「LoggLaw CAM」を用いたグリーンランド氷河フィヨルド海底調査の論文が掲載されました

北海道大学北極域研究センターの Evgeny A. Podolskiy 氏らによる国際研究チームが、当社の水中ビデオロガー「LoggLaw CAM」を用いて、北西グリーンランドの氷河フィヨルド海底で実施した映像・音響同期観測の成果を、国際学術誌 PLOS ONE(2026年5月6日付)で発表しました。深海性のヨコエビ類・カイアシ類の挙動から、後ろ向きに漂うクサウオ科の魚、さらにイッカクの音響存在まで、これまで観察が難しかった氷河フィヨルド海底生態系の姿を浮かび上がらせています。

論文情報: Podolskiy EA, Ogawa M, Hasegawa K, Tomiyasu M, Sugiyama S, Mitani Y. (2026) Seafloor video-acoustic monitoring in a Greenlandic glacial fjord records hyperbenthos, backward-swimming fish, and narwhals. PLOS ONE. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0347193

北西グリーンランド・Inglefield Bredning フィヨルドでの LoggLaw CAM 投入の様子
北西グリーンランド・Inglefield Bredning フィヨルドでの観測機材投入の様子(写真: Monica Ogawa 氏 / 北海道大学)

調査の概要

調査は2025年8月、北西グリーンランドの Inglefield Bredning フィヨルド(北緯77°28′、西経66°21′付近)で実施されました。研究チームは Qeqertaq と Heilprin 氷河の間にあたる水深約260mの海底に、LoggLaw CAM と音響レコーダー(SoundTrap ST600)、海洋環境センサーを組み合わせた小型係留系を約8日間設置。輸送用ケース1個・全重量15kg未満というコンパクトな構成で、ヘリコプターやボートでのアクセスが必須となる極域フィールドでの運用を実現しました。

主な発見

  • のべ478個体・11分類群以上の生物を確認 ― 計37時間分の映像を目視解析した結果、ヨコエビ類(47%)・カイアシ類(26%)が優占。氷河フィヨルド海底の超低層動物相(hyperbenthos)の連続観察例として貴重なデータとなりました。
  • クサウオ科魚類の「後ろ向き遊泳」を記録 ― 海底付近の流れに身を任せ受動的に後退する珍しい行動が映像で捉えられました。
  • イッカク(narwhal)の音響的存在を全期間で検出 ― 同期記録された水中音から、夏季のフィヨルド深部にイッカクが継続的に来遊している様子が示されました。
  • 潮汐に同期した粒子フラックスの変動 ― デジタル粒子画像流速測定法(DPIV)解析により、約12時間周期で粒子輸送が変調していることが定量化されました。
LoggLaw CAM の赤色 LED 照明下で撮影された深海性魚類
LoggLaw CAM の赤色 LED 照明(波長 ~660nm)下で撮影された深海性魚類。動物への影響を最小化しつつ暗黒環境を撮影する。

LoggLaw CAM が果たした役割

本調査で使用された「LoggLaw CAM」は、深海動物への影響を最小化する 赤色 LED(波長 ~660nm)照明ハイドロフォン同期録音 を備えた水中ビデオロガーです。本研究では水深500m対応モデルが用いられ、20分ごとに10分間、VGA(640×480ピクセル、30fps)映像と 96kHz の音響データを同期収録しました。

従来の海底生態調査で用いられてきたトロール網や採泥器は、移動性の高い動物の挙動を捉えるのが難しく、サンプリング自体が動物群集に影響を与えることが知られています。LoggLaw CAM は受動的・非侵襲的に長時間の連続観測を行えるため、本論文でも「氷河フィヨルド深部の生態調査における代替的な方法論」と位置づけられています。

観測機材の投入時に撮影された海面ブイ
係留系投入時、LoggLaw CAM のカメラ越しに記録された海面ブイ。投入から海底着底までの全行程がカメラに収められた。

意義と今後の展開

本論文は、極域氷河フィヨルドという観測ハードルの高い環境で、映像・音響・物理パラメータの同期観測を小型機材一式で完結させた稀少な事例です。気候変動の影響が顕著に表れる極域沿岸生態系のモニタリングにおいて、当社の水中ロガー製品群が国際的な研究プロジェクトに貢献できることを示すものとなりました。

当社では今後も、極域・深海・沿岸の各環境に対応する映像・音響・行動データ取得ソリューションを開発・提供し、国内外の研究機関と連携しながら、海洋生態系の理解と保全に寄与してまいります。

共著者

  • Evgeny A. Podolskiy(北海道大学 北極域研究センター)― 筆頭著者・責任著者
  • Monica Ogawa(北海道大学 北極域研究センター / 国立極地研究所)
  • Kohei Hasegawa(北海道大学 水産科学研究院)
  • Makoto Tomiyasu(北海道大学 水産科学研究院)
  • Shin Sugiyama(北海道大学 低温科学研究所)
  • Yoko Mitani(京都大学 野生動物研究センター)

補足資料(PLOS ONE Supplementary Materials)

本論文の補足資料として、LoggLaw CAM で取得された映像のハイライト集や解析過程の動画、全検出生物のアノテーション表などが PLOS ONE 誌から公開されています。下記リンクから直接ダウンロード可能です。


関連する製品・サービス

LoggLaw CAM ― 水中ビデオロガー

本調査で使用された LoggLaw CAM は、赤色 LED 照明と同期ハイドロフォン録音を備えた水中ビデオロガーです。海洋動物の自然行動の記録、深海・氷河フィヨルドなどの低照度・暗黒環境下での観測、生態系の非侵襲モニタリングに幅広く活用されています。

バイオロギングとは ― 解説ページ

バイオロギング(Bio-logging)は、動物に小型データロガーを装着して行動・生理・環境情報を記録する手法です。当社製品の使用例や、世界の研究動向を解説しています。