主要な発見
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深層学習で音源を分類し、対象動物の浮上時にその結果を送信するバイオロギングシステムは、著者らの知る限り世界初である。
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音源は「生物音・地球物理音・人為音」を起点に3階層・計52クラスで分類。Top1精度は第1階層91.3%・第2階層86.7%・第3階層62.3%(Top5では97.1%・96.3%・86.3%)だった。
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沖縄県・石垣島の伊原間(いばるま)海岸で、産卵のために来遊したアオウミガメ7個体に装着して実証。装着時間は1個体あたり平均1日弱(3.73〜24.33時間)だった。
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LTE-M回線では5個体から位置778点・音分類/センサ153点を回収。送信に成功した個体では音分類・センサデータの91.6%、位置データの95.3%が取得できた(回収した機器からは全7個体・位置1,092点/音分類240点)。
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分類結果の大半は背景雑音(76.4±15.8%)だったが、生物由来音ではドクウツボ(Gymnothorax javanicus, 39.0±40.2%)とコビレゴンドウ(Globicephala macrorhynchus, 33.5±22.7%)が主要で、音の観測の73.7%は水深2m未満で得られた。
調査の概要
本システムは、無指向性ハイドロフォン(AS-1, Aquarian Hydrophones/感度 −208dB re V/μPa, 1Hz〜100kHz)で水中音を44.1kHz・16bitで録音し、機器内のマイコン(STM32 H7シリーズ)上で深層学習による音源分類を実行する。3軸加速度・地磁気、水深・水温も併せて記録し、浮上時には FastLoc GPS で測位して LTE-M 回線でデータを送る。外洋向けに Argos 衛星通信版も開発した。
実証試験は2022年夏、沖縄県・石垣島の伊原間海岸(北緯24°20′・東経123°50′)で、産卵に来遊したアオウミガメ(Chelonia mydas)7個体に装着して行われた。30分ごとに5分間録音するデューティサイクルで運用し、装着個体の正常な産卵行動を確認した後に機器を回収している。
使用機材と役割
膨大な録音をそのまま送るのは携帯・衛星回線の帯域では現実的でない。本ロガーは音そのものではなく「機器内で分類した結果」(1パケット最大560バイト)を送ることで、近リアルタイムの水中音モニタリングを可能にした。深層学習モデルは MobileNet v1 を TensorFlow Lite で8bit量子化し、約370kB に圧縮してマイコンの RAM 内で動かしている。
本体寸法は約160×100×85mm、重量は空中で約2kg・水中で約0.6kg。30,000mAh のリチウムポリマー電池を備え、(無送信条件で)最大40日の連続動作を想定して設計された。録音・分類・センサ計測・測位・送信までを一台に統合した、当社の水中音響分野における中核的な開発成果である。
意義・なぜ重要か
水中の音風景(サウンドスケープ)は生物・地形・人間活動の状態を映す指標だが、従来は係留型レコーダーを一点に固定し後から回収する方式が主流で、広域・多点・準リアルタイムの観測は難しかった。動物自身を観測プラットフォームにすることで、固定インフラなしに沿岸域を動き回りながら音環境を捉え、結果を浮上時に送り返せる。
多点・長期のバイオロギング観測を積み重ねれば、音源の分布を反映した詳細な「サウンドスケープマップ」の作成につながる。水中音響という当社の取り組みが、海洋生態系・環境モニタリングの新しい手法として世界初の形で結実した成果である。
共著者・連携機関
- 野田 琢嗣 / Takuji Noda(Biologging Solutions株式会社)― 責任著者
- 小泉 拓也 / Takuya Koizumi(Biologging Solutions株式会社)
- Naoto Yukitake・Daisuke Yamamoto・Tetsuro Nakaizumi(Biologging Solutions株式会社)
- Kotaro Tanaka(Japan Fisheries Science and Technology Association/笹川平和財団 海洋政策研究所)
- Junichi Okuyama(水産研究・教育機構 水産技術研究所)
- Kotaro Ichikawa(京都大学 フィールド科学教育研究センター)
- Takeshi Hara(Japan Fisheries Science and Technology Association)
出典
Takuji Noda, Takuya Koizumi, Naoto Yukitake, Daisuke Yamamoto, Tetsuro Nakaizumi, Kotaro Tanaka, Junichi Okuyama, Kotaro Ichikawa, Takeshi Hara (2024) Animal-borne soundscape logger as a system for edge classification of sound sources and data transmission for monitoring near-real-time underwater soundscape. Scientific Reports.
https://doi.org/10.1038/s41598-024-56439-x関連する製品・活用例
関連する研究紹介
解説・執筆
京都大学大学院情報学研究科出身、UC Santa Cruz 環境学部卒。日本発のバイオロギング機器メーカー Biologging Solutions株式会社の共同創業者として、自治体・大学・国際コンソーシアムへの当社製品の導入を推進している。
南極でペンギンに装着したビデオロガーによる行動研究をはじめ、自身もバイオロギング研究者として現場経験を持つ。Biologging Solutions株式会社の共同創業者として、研究現場のニーズに直結する小型データロガー・GPS首輪・ビデオロガーの開発を主導している。