水中音響モニタリングシステム LoggLaw NAD-W

クラウドAI解析に対応した水中音響モニタリングシステム。広帯域ハイドロフォンと最大192kHzサンプリングで水中音を高精度に記録し、海洋哺乳類のクリック音・ホイッスルや船舶ノイズを自動検出(船舶音は対象海域で録音した教師データが必要)。オプションのLTE通信モジュールでエッジAIによる準リアルタイム監視も実現します。

LoggLaw NAD-W 一式(耐圧筐体本体・ハイドロフォン・アンテナ)
LoggLaw NAD-W 一式|耐圧筐体本体、広帯域ハイドロフォン、通信用アンテナ

LoggLaw NAD-W の概要

LoggLaw NAD-W は、海中に設置して水中音を録音し、イルカなどの鳴音や船舶ノイズを AI で自動検出する、定点観測用の水中音響モニタリングシステムです。京都の Biologging Solutions株式会社が開発しました。録音した元の音も SD カードに残るため、AI の判定をあとから確かめ、その海域の音で AI を学習し直せます。

種類
海中の一地点に設置して水中音を続けて録る、パッシブ音響モニタリング(PAM)用の録音装置。自らは音を出さず、聞くだけの観測方法です。
録音
広帯域ハイドロフォンで 192 kHz・16 bit・モノラル録音(最大 96 kHz まで)。フィルタをかけない WAV を産業用 SD カード(標準 256 GB/オプション 512 GB)に保存します。
自動検出
学習させた対象種の鳴音(イラワジイルカのクリック音・ホイッスルなど)と船舶ノイズを、時間の区切りごとに AI が判定します。船舶音の検出には対象海域で録音した教師データが必要です。
結果の受け取り方
SD カードを回収して録音をクラウドにアップロードする方法と、LTE モジュールを付けて機器内の AI の検出結果を 15 分ごとに送る方法の 2 通りがあります。
設置
フロート・スタンド・アンカーに対応。本体は直径 11 cm×全長 40 cm、空中重量 約 3 kg、耐圧 600 m。標準バッテリーで約 2 週間動きます。
主な用途
洋上風力発電の環境影響評価(杭打ち音・稼働音と海生哺乳類の監視)、希少種の保全(タイ・ソンクラー湖のイラワジイルカ保全プロジェクトで稼働)。
名称
NAD-W は Near-real-time Automated Detection and Warning system(準リアルタイムの自動検出・警報システム)の頭文字です。
仕組み・仕様・設置計画・検出の内容を 12 ページにまとめた PDF カタログをご覧いただけますLoggLaw NAD-W カタログ (PDF)

主な特徴

広帯域ハイドロフォン

最大96kHzまでの周波数を捉える広帯域収音。192kHz/16bitでサンプリングし、海洋哺乳類のエコロケーションや船舶ノイズなど多様な音響事象を高精度に記録します。

クラウドAIによる自動検出

SDカードに記録した音声データをクラウド(LoggLaw Cloud)にアップロードするだけで、学習させた対象種のクリック音・ホイッスル(イラワジイルカなど)や船舶ノイズを自動検出(船舶音は対象海域で録音した教師データが必要)。スペクトログラム、検出タイムライン、CSVエクスポートに対応します。

エッジAI+準リアルタイム送信(オプション)

オプションのLTEデータ送信モジュールを追加すると、装置上でAI解析を実行し、検出結果を15分ごとにクラウドへ自動送信。SDカード回収を待たずに継続的な監視が可能です。

高耐圧・長期運用

600m深まで対応する堅牢な耐圧筐体。標準バッテリーで約2週間の連続運用が可能で、フロート・スタンド・アンカーなど多様な設置形態に対応。容易なバッテリー交換で長期モニタリングを支援します。

産業用SDカードによる大容量記録

産業用高耐久SDカード(最大256GB標準/512GBオプション)にWAV形式で記録。フィルタ処理を行わない原データを保存するため、AIモデルの改良に応じた再解析も可能です。

ダッシュボード&アラート

LoggLaw CloudのWebダッシュボードで、検出イベントを地図・タイムライン・統計表示。メールやSMSによるアラート通知、複数機器の一元管理にも対応します。

録った音でAIを育てる

NAD-Wは検出結果だけでなく、元の音もフィルタなしのWAVでSDカードに残します。AIの判定をあとから元の音で確かめ、設置地点の音でAIを再学習します。更新したモデルはクラウドのAIと機器内のエッジAIに反映し、使うほどその海域の音に合った検出になります。

改善のサイクル

  1. 録音
  2. AIが検出・通知
  3. 生データで検証
  4. 再学習
  5. モデル更新録音に戻ってくり返す

2つの使い方

A ベーシック

SDカード回収 → クラウドAI

  1. 1録音
  2. 2SD回収
  3. 3WAVをアップロード
  4. 4結果を閲覧

B 通信モジュール付き

エッジAI → LTEで準リアルタイム

  1. 1録音
  2. 2機器内でAI解析
  3. 3LTE自動送信
  4. 4地図で確認

どちらの使い方でも、録音した生の音はSDカードに残ります。回収後に、AIの判定を元の音で確かめられます。

洋上風力発電の環境影響評価(EIA)での活用

洋上風力発電の環境アセスメントでは、建設時の杭打ち騒音や稼働騒音が海生哺乳類に与える影響を、事前から事後まで継続的に評価・監視することが求められます。NAD-Wと市民参加型モニタリングポータルは、水中音の収録からデータ運用・報告までを一体で支援します。

建設・稼働騒音のモニタリング

広帯域収録で杭打ち音・船舶ノイズ・稼働音を長期記録。ポータルの工事スケジュール重畳と予測騒音レベルにより、ソフトスタートや作業ウィンドウ調整など低減措置の運用を支援します。

受動的音響モニタリング(PAM)

イルカ類・ヒゲクジラ類の発声や船舶交通を自動検出(船舶音は対象海域で録音した教師データが必要)。AIは学習により対象種を拡張でき、海域での在/不在や時空間分布の把握に活用できます。

長期・面的監視と対照区比較

複数のNAD-Wブイを影響海域と対照海域の双方に展開し、電圧・検知・保守履歴・電波カバレッジを一元管理。事前(ベースライン)/工事中/稼働後を通じて記録し、対照海域との差分から工事由来の影響を切り分ける調査設計(BACI設計)に対応します。

エビデンスと報告

KDEホットスポット、保護区内外の比率、季節・環境との相関などを分析。目撃・検知・調査データはCSVで出力でき、評価書作成や事後調査を支援します。

対象種・規制に応じた構成

NAD-Wの収録帯域は最大96kHz(192kHzサンプリング)です。ネズミイルカ・スナメリなど約125〜140kHzの高周波エコロケーションを主対象とする海域では、高サンプリングの専用PAMと併用し、NAD-Wは広帯域騒音・発声種・統合プラットフォームを担う構成を推奨します。規制対応で絶対音圧レベル(dB re 1µPa)を報告する場合は校正済み測定を用います。最適な構成は対象種・海域に合わせてご提案します。

仕様

製品の技術仕様詳細

ハードウェア仕様

寸法直径 11 cm × 全長 40 cm(本体)
重量約 3 kg(空中・バッテリー込)
耐圧深度600 m
動作温度-10°C ~ +50°C
バッテリー寿命約2週間(標準バッテリー、機内持込対応)
メモリ容量標準 256 GB / オプション 512 GB
記録時間(連続)256 GB: 約185時間(約7.7日) 512 GB: 約370時間(約15.4日) ※192 kHz / 16-bit / モノラル時
記録時間(50%デューティ)256 GB: 約15.4日 512 GB: 約30.8日
データインターフェース産業用SDカード(着脱式)。設定もSDカード上の設定ファイルで実施。専用リーダーやケーブル接続は不要。
コネクタハイドロフォン/LTEアンテナ/GPSアンテナ用水中コネクタ(着脱容易)
設置形態フロート・スタンド・アンカー対応。バッテリー交換が容易。

録音仕様

サンプリング周波数192 kHz
周波数レンジ最大 96 kHz(Nyquist周波数)
量子化ビット数16 bit
チャンネルモノラル
データ形式タイムスタンプ付き WAV
録音モード連続録音・デューティサイクル・スケジュール録音に対応。LTEモジュール搭載時は、30秒録音 → 30秒解析の交互サイクルで装置上のエッジAI解析を行います。
信号フィルタ原音をフィルタ処理せず記録。検出・分類はすべてAIエンジン側で実施するため、AIモデル改良時の再解析が可能です。

AI解析機能

検出対象(学習により拡張可)学習させた対象種の発声を、時間セグメント単位で有無判定。イラワジイルカのクリック音・ホイッスルや船舶ノイズがその例で、対象ごとに音響モデルを学習させれば分類対象を拡張できます(船舶音など対象海域で録音した教師データが必要)。船舶は船種別(ロングテールボート・貨物船など)の分類にも対応します。
カスタムモデルジュゴンの発声、テッポウエビ、魚類コーラスなど追加検出モデルに対応(別途協議)

LTEデータ送信モジュール(オプション)

エッジAI解析装置上でリアルタイムに音響分類(イラワジイルカ・船舶ノイズなど。船舶音は対象海域で録音した教師データが必要)
通信方式3G/4G LTE(MQTTプロトコル)。SIMカードと通信プランは利用者にて調達。
データ送信間隔15分ごと
GPS1日1回の位置取得(複数台一括管理に対応)
通信途絶時の動作デバイス側でデータをキャッシュ、復旧後に自動再送信

記録時間はSDカードの容量から求めた値です。1回の設置で続けて使える期間は、バッテリーとSDカードのうち短いほうで決まります(例:256GBに連続録音すると、約7.7日でSDカードが先に埋まります)。

本仕様は予告なく変更されることがあります。

※ 製品の改良により仕様は予告なく変更される場合があります。

連携する市民参加型モニタリングポータル

NAD-Wで収集した音響データは、クラウド上の市民参加型モニタリングポータルに集約できます。目撃情報・座礁通報・デバイスの稼働状況・解析結果をひとつの地図に統合し、研究者・行政・市民を同じ作戦盤でつなぎます。陸上のGPS首輪から海域の音響ブイまで対象動物を問わず構成でき、タイ・ソンクラー湖のイラワジイルカ保全プロジェクトはその適用例の一つです。

ポータルでできること

ライブモニタリングマップ

目撃報告・船舶/工事ノイズ・保護区・センサー稼働状況をレイヤーで重ね、対象エリア全体の状況をほぼリアルタイムに把握(市民の目撃報告は即時、機器の検知データはLTEで約15分間隔、LTEなしはSDカード回収後に反映)。タイムライン再生で過去の検知も時系列で再現します。

音響検知デバイス監視

NAD-Wブイ全機の電圧・本日の検知数・最終通信・稼働状態を一元管理。低バッテリーやオフラインをブラウザ通知・LINEで自動アラートし、閾値はプロジェクト単位で設定できます。

市民参加型の目撃・座礁通報

GPSワンタップまたは地図ピンで、目撃・座礁/死亡などをモバイルから通報。多言語UI・写真添付・匿名投稿に対応し、緊急通報は対応チームへ即時連携します。

オフライン対応フィールド調査

通信のない海上や山間部でも、位置・気象・観察イベントを端末側に記録。通信が戻ると自動アップロードされ、iPhone / Android で同じように動作します。

統計・詳細データ分析

総目撃数・群サイズ・季節トレンドなどのKPIに加え、KDEホットスポット、保護区内外比率、対象種/船舶/工事ノイズ別の音響内訳まで分析できます。

通知・データ連携

重要イベントをブラウザPush・LINEで通知。目撃・検知・調査データはCSVでエクスポートでき、パートナー組織には読み取り専用フィードを安全に共有できます。

ポータル画面

ライブモニタリングマップ|目撃・センサー・保護区を1つの地図に統合
ライブモニタリングマップ|目撃・センサー・保護区を1つの地図に統合
音響検知デバイス監視|NAD-Wブイの稼働状況と検知数を一覧表示
音響検知デバイス監視|NAD-Wブイの稼働状況と検知数を一覧表示
統計ダッシュボード|目撃数・頭数・季節トレンドを可視化
統計ダッシュボード|目撃数・頭数・季節トレンドを可視化
詳細データ分析|個体群・空間・行動・音響・環境・デバイスの6視点
詳細データ分析|個体群・空間・行動・音響・環境・デバイスの6視点

※ 画面はタイ・ソンクラー湖のイラワジイルカ保全プロジェクトでの稼働例です。同じ基盤をサル・シカなど他の対象動物にも構成できます。

少数台から、一緒に実証

水中の音は場所ごとに違うため、AIはその現場の音で調整してはじめて本領を発揮します。まずは少数台で実際の音を録り、検出対象と精度をお客様と一緒に詰めてから、運用を広げていきます。

  1. STEP 1

    現場で録る

    少数台を設置し、対象海域の実際の音を集めます。

  2. STEP 2

    AIを調整

    集めた生データで、検出対象と精度を一緒に確かめながら詰めます。

  3. STEP 3

    運用を広げる

    効果を確かめてから、台数や範囲を拡大します。

ほかの生物や音を対象にしたい場合もご相談ください。実証の中でAIを調整します。

よくある質問

LoggLaw NAD-W とはどのような装置ですか?
海中に設置して水中音を記録する、定点観測用の水中音響モニタリングシステムです。広帯域ハイドロフォンで水中音を192kHz・16bitで録音し、クラウドのAIで、学習させた対象種の鳴音(イラワジイルカのクリック音・ホイッスルなど)や船舶ノイズを自動検出します。
どの周波数まで録音できますか?
192kHzサンプリングで、最大96kHzまでの音を記録できます。ネズミイルカ・スナメリなど約125〜140kHzの高周波エコロケーションを主な対象とする場合は、高サンプリングの専用PAMと併用し、NAD-Wは広帯域騒音や発声種の記録を担う構成をおすすめしています。
どのくらいの期間、観測できますか?
標準バッテリーで約2週間の連続運用ができます。192kHz・16bit・モノラルで連続録音した場合の記録時間は、256GBで約185時間(約7.7日)、512GBで約370時間(約15.4日)です。50%デューティで録音すると、256GBで約15.4日、512GBで約30.8日分を記録できます。1回の設置で続けて使える期間は、バッテリーとSDカードのうち短いほうで決まり、256GBに連続録音する場合はSDカードが先に埋まります。バッテリーは容易に交換できます。
どのような音を自動検出できますか?
学習させた対象種の発声を、時間セグメントごとに有無判定します。イラワジイルカのクリック音・ホイッスルや船舶ノイズがその例で、船舶はロングテールボート・貨物船などの船種別にも分類できます。船舶音の検出には、対象海域で録音した教師データが必要です。ジュゴンの発声、テッポウエビ、魚類コーラスなどの追加モデルは別途ご相談ください。
AIの検出性能は設置場所によって変わりますか?
変わります。背景雑音や動物との距離など、設置地点の音環境によって検出性能は変わります。そのため、設置地点で録った生データでAIを再学習し、更新したモデルを反映して、その海域の音に合わせて精度を高めていきます。
装置を回収しなくても結果を確認できますか?
オプションのLTEデータ送信モジュールを付けると、装置上のエッジAIが音を解析し、検出結果を15分ごとにクラウドへ自動送信します。SIMカードと通信プランはお客様にご用意いただきます。通信が途絶えたときはデータを装置に保存し、復旧後に自動で再送します。LTEを使わない場合は、SDカードの録音をクラウドにアップロードして解析します。
どのように設置しますか?
フロート・スタンド・アンカーによる設置に対応しています。本体は直径11cm×全長40cm、重量は空中で約3kg(バッテリー込み)、耐圧深度は600mです。設定はSDカード上の設定ファイルで行うため、専用のリーダーやケーブルは要りません。
洋上風力発電の環境影響評価に使えますか?
使えます。杭打ち音・船舶ノイズ・稼働音を長期に記録し、イルカ類・ヒゲクジラ類の発声を自動検出します。複数台を影響海域と対照海域に設置し、事前・工事中・稼働後を通じて比べる調査設計(BACI設計)にも対応します。規制対応で絶対音圧レベル(dB re 1µPa)を報告する場合は、校正済みの測定を用います。
少数台から試せますか?
はい。まず少数台を設置して対象海域の実際の音を録り、その生データで検出対象と精度をお客様と一緒に詰めます。効果を確かめてから、台数や範囲を広げていく進め方をおすすめしています。
観測や解析そのものを依頼できますか?
はい。機器の購入とは別に、海洋音響モニタリングの受託観測や共同研究としてもご相談いただけます。詳しくは「海洋音響モニタリング」のページをご覧ください。
LoggLaw CAM とはどう違いますか?
NAD-W は海中の一地点に設置し、同じ場所の水中音を長く録り続ける定点観測用の装置です。LoggLaw CAM は主に動物に取り付けて、映像とハイドロフォンの音を同時に記録する水中ビデオロガーです。同じ海域を続けて監視するなら NAD-W、動物の行動と周りの音を合わせて調べるなら CAM が向いています。
NAD-W という名前は何の略ですか?
Near-real-time Automated Detection and Warning system(準リアルタイムの自動検出・警報システム)の頭文字です。水中音を録り、対象の音を自動で検出し、必要に応じて通知する、という装置の役割を表しています。

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