
主要な発見
- 1
計37時間分の映像の目視解析で、のべ478個体・11分類群以上の生物を確認。氷河フィヨルド海底の超低層動物相(hyperbenthos)の連続観察例として貴重なデータとなった。
- 2
海底付近の流れに身を任せて受動的に後退する、クサウオ科魚類の珍しい「後ろ向き遊泳」を映像で記録。
- 3
同期記録された水中音から、イッカク(narwhal)の音響的存在を観測全期間で検出。夏季のフィヨルド深部への継続的な来遊を示した。
- 4
デジタル粒子画像流速測定(DPIV)解析により、約12時間周期(潮汐に同期)で粒子フラックスが変調していることを定量化。
調査の概要
調査は2025年8月、北西グリーンランドの Inglefield Bredning フィヨルド(北緯77°28′、西経66°21′付近)で実施された。Qeqertaq と Heilprin 氷河の間にあたる水深約260mの海底が観測点。
研究チームは LoggLaw CAM と音響レコーダー(SoundTrap ST600)、海洋環境センサーを組み合わせた小型係留系を約8日間設置。20分ごとに10分間、VGA(640×480ピクセル, 30fps)映像と 96kHz の音響データを同期収録した。
使用機材と役割
本調査で使われたのは水深500m対応モデルの LoggLaw CAM。深海動物への影響を最小化する赤色LED(波長 ~660nm)照明と、同期ハイドロフォン録音を備えた水中ビデオロガーである。
従来の海底生態調査で使われるトロール網や採泥器は、移動性の高い動物の挙動を捉えにくく、サンプリング自体が動物群集へ影響を与えることが知られる。LoggLaw CAM は受動的・非侵襲的に長時間の連続観測ができるため、論文中でも「氷河フィヨルド深部の生態調査における代替的な方法論」と位置づけられた。
意義・なぜ重要か
極域氷河フィヨルドという観測ハードルの高い環境で、映像・音響・物理パラメータの同期観測を小型機材一式で完結させた稀少な事例である。
気候変動の影響が顕著に表れる極域沿岸生態系のモニタリングにおいて、当社の水中ロガー製品群が国際的な研究プロジェクトに貢献できることを示す成果となった。
共著者・連携機関
- Evgeny A. Podolskiy(北海道大学 北極域研究センター)― 筆頭著者・責任著者
- Monica Ogawa(北海道大学 北極域研究センター / 国立極地研究所)
- Kohei Hasegawa(北海道大学 水産科学研究院)
- Makoto Tomiyasu(北海道大学 水産科学研究院)
- Shin Sugiyama(北海道大学 低温科学研究所)
- Yoko Mitani(京都大学 野生動物研究センター)
出典
Evgeny A. Podolskiy, Monica Ogawa, Kohei Hasegawa, Makoto Tomiyasu, Shin Sugiyama, Yoko Mitani (2026) Seafloor video-acoustic monitoring in a Greenlandic glacial fjord records hyperbenthos, backward-swimming fish, and narwhals. PLOS ONE.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0347193関連する製品・活用例
関連する研究紹介
解説・執筆
京都大学大学院情報学研究科出身、UC Santa Cruz 環境学部卒。日本発のバイオロギング機器メーカー Biologging Solutions株式会社の共同創業者として、自治体・大学・国際コンソーシアムへの当社製品の導入を推進している。
南極でペンギンに装着したビデオロガーによる行動研究をはじめ、自身もバイオロギング研究者として現場経験を持つ。Biologging Solutions株式会社の共同創業者として、研究現場のニーズに直結する小型データロガー・GPS首輪・ビデオロガーの開発を主導している。