
主要な発見
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これまでの仕組みは、決められた音だけを検出するものでした。DGPU は、AIにとって未知の音も次の観測対象へつなげられるようにしました。
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海の音に合わせた音響基盤モデルを作り、未知音の候補探しと、似た音のまとめ、新しい検出器の学習に使いました。
- 3
未知音を見つけるところで終わらせず、専門家の確認、新しい検出対象への追加、誤検出の上限を守った監視までを、ひとつの流れとしてまとめました。
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既存の録音データで試したところ、正解ラベルを約3分の1に減らしても、すべて使ったときの95%の検出性能(再現率)が出ました。
調査の概要
水中マイクで海の音を長く録り続けると、生き物の鳴き声、船の音、波や雨の音など、たくさんの音が入ります。海の様子は場所や季節で変わり、同じ音でも、伝わり方や周りの雑音しだいで聞こえ方が変わります。
しかも海の中は暗く、音を出した生き物や物を人が見に行くのは簡単ではありません。「何が、どんな状況で出した音なのか」を確かめられるのは録音のごく一部で、AIに教えるための正解ラベルもその分しか付けられません。
多くの音響AIは、前もって学習した種類の音を見つけるように作られています。ところが、海にある音の種類や聞こえ方の変化を前もって全部そろえるのは無理があります。学習していない音は、大事な音でも見逃したり、別の音と取り違えたりしてしまいます。そこで、少ない正解ラベルを活かしながら、知らない音も観測対象に加えていける仕組みを考えました。
DGPU のしくみ
DGPU は4つの段階でできています。未知音の候補を拾い出す「抽出(Detect)」、似た音をまとめる「集約(Group)」、専門家が確かめて新しい検出対象にする「昇格(Promote)」、実際の監視に組み込む「統合(Union)」です。音の正体をAIだけで決めるのではなく、AIの整理と専門家の知識を組み合わせて、観測できる音を少しずつ増やしていきます。
これを支えるのが「音響基盤モデル」です。たくさんの音を聞いて、音の違いや似ているところをつかめるようにしたAIで、今回は海の音に合わせて作りました。このモデルがとらえた音の特徴から、知っている音とは違う候補を自動で拾い出し、似たもの同士をまとめます。
長い観測では、AIの誤検出を人が確かめる手間が、使えるかどうかを大きく左右します。そこで「統合」では、新しく作った検出器を単独で使うか、これまでの検出器と組み合わせるかを、誤検出の上限を見ながら決めます。「昇格」で検出器を作り、「統合」で実際の監視に使える形にする、という役割分担です。
今回は既存の録音データを使って、DGPU の主な段階を組み立てて試しました。AIが知らない音を、専門家の判断を通して観測対象に取り込み続けるための土台ができたと考えています。DGPU に関わる技術は、当社で特許を出願しています。
意義・なぜ重要か
DGPU は、調べたい音を最初から決めきれない、長く広い範囲の水中音の観測での活用を想定しています。たとえば、海洋状況把握(MDA)、海の生き物や生物多様性の長期モニタリング、海の環境の変化や人の活動による音の把握、洋上風力発電や港湾開発での水中騒音と生態系の環境アセスメントです。海中の設備や機器から出るいつもと違う音の収集、ためこんだ録音の見直し、これまでの検出器では扱えない音の検出器づくりも想定しています。
どの用途でも、音の意味をAIだけで決めず、それぞれの分野の専門家の判断と組み合わせることが大切です。DGPU は音響AIと専門家の知識をつなぎ続け、知らない音も取り込みながら、海の変化を音から聞き取る「海の聴診器」になることを目指しています。
この研究は、NEDO「SBIR推進プログラム」フェーズ1の採択課題「水中サウンドスケープ観測可能なバイオロギングによる生物多様性のマッピング」(課題番号:24000810-0)と、それに続く環境省「省庁連結型SBIR 環境保全研究費補助金(イノベーション創出のための環境スタートアップ研究開発支援事業)」フェーズ2(課題ID:25-R-03)に関わる研究開発の一環です。
共著者・連携機関
- 野田 琢嗣 / Takuji Noda(Biologging Solutions株式会社 Logverse 部門)
- 小泉 拓也 / Takuya Koizumi(Biologging Solutions株式会社 Logverse 部門)
出典
Takuji Noda, Takuya Koizumi (2026) Discovery and promotion of unknown sounds into operational detection targets for underwater passive acoustic monitoring under false alarm constraints. Scientific Reports.
https://doi.org/10.1038/s41598-026-73751-w関連する製品・活用例
関連する研究紹介
解説・執筆
京都大学大学院情報学研究科出身、UC Santa Cruz 環境学部卒。日本発のバイオロギング機器メーカー Biologging Solutions株式会社の共同創業者として、自治体・大学・国際コンソーシアムへの当社製品の導入を推進している。
南極でペンギンに装着したジャイロロガーによる行動研究をはじめ、自身もバイオロギング研究者として現場経験を持つ。Biologging Solutions株式会社の共同創業者として、研究現場のニーズに直結する小型データロガー・GPS首輪・ビデオロガーの開発を主導している。